この先、美容業界の流通はどうなるのだろう?

 業界が一般の産業に比べて著しく遅れているのが流通だ。他業の多くは、インターネット時代にふさわしく、ネットを中心にした流通に移行している。メーカーから直接、あるいはネット上の通販サイトを利用して、必要な物を入手する。

 

 流通過程にある問屋などを通さずにメーカーから直接購入するのだから、流通コストがカットでき、売る側のメーカーも買う側の購入者もメリットは大きい。ネットを中心にした流通への移行は日本に限らず、世界的な潮流である。

 

 そんな社会の潮流とかけ離れているのが、わが日本の業界の流通だ。いまだにディーラーを介して必要な物を購入しているサロンが大半である。もちろん業界専門のネット通販会社を利用している美容店もあるが、そんな店でもディーラーと付き合っている。ある調査によると、店は平均3社のディーラーと取引しているという。

 

 コストカットできるネット流通を利用しないで、なぜディーラーと取引しているかというと、大半が「前々から取引しているから」という。つまり惰性だ。どうも原価意識、経営意識が乏しい。 さらに取引するディーラーを決めるポイントは営業マンの人柄が最多とあっては、これは完全に旧態依然とした「商い」である。 「ビジネス」にはなっていない。

 

 以前より業界では、ディーラーが生き残るには、粧材など物の販売とともに、サロンが求める情報や経営戦略を提案できる力が求められるといっていたが、残念ながら経営者はそこまではディーラーに求めていない。逆にいうと、そんな知識や情報を持ち合わせた営業マンはいないのかもしれない。

 

 経営者の経営意識がこの程度では、ネット時代とはいえ、業界にネット流通が浸透するのは難しい。このような状況ならディーラーは安穏として営業していけそうだが、世の中そうはいかない。 大手ディーラーによる寡占化が進んでいるし、これまで業界流通に君臨していた卸も淘汰されつつある。

 

 この先、業界流通はどうなるか。大手ディーラーによる寡占化はさらに進み、その次には大手ディーラー同士の熾烈な競争が始まるだろう。さらに、業界大手メーカーによるディーラーの総代理店化、いわゆる系列化なども予見される。平均3社のディーラーと取引している店も、流通の寡占化、系列化が進むと取引ディーラーを絞り込むことになる。業界流通の行方は、業界全体を巻き込んでの変革を引き起こす可能性を秘めている。

 

 業界にネット流通が浸透するのは難しそうだと前述した。しかし徐々にではあるがネット流通は拡大しているのも事実だ。今年、マザーズに上場した業界のネット通販会社が毎年2桁の売上を伸ばしているのを見てもわかる。そして、業界流通の寡占化、系列化が予見される今こそ、個々の美容店は独自の商材を探して、営業に活用することが求められる。

 iPad、iPhoneを使いこなす若い経営者は、ぜひインターネットの世界にも目を向けてほしい。 業界流通にはない、つまり競合店にはない、優れた粧材が見つかるはずだ。