理容室に行けないお年寄りや障害者のために訪問サービスを展開している三重県東員町のNPO法人が、手作りで移動型のヘアサロン「理美容車」を完成 させた。トラックの荷台を改造したもので、髪を切るだけでなく、洗髪やパーマもできる。リフトで車いすごと上り下りも可能だ。今後リクエストに応じて、東海3県の老人福祉施設や寝たきりの高齢者宅を訪ねることにしている。
NPO法人「日本理美容福祉協会三重県中部センター『きれいや』」が手掛けた。
NPOは2006年設立で、理容師、美容師計約20人がそれぞれ勤める店の休日に施設などを訪れている。だが、髪の毛が散らばるトラブルが起きた り、自宅を見られるのを嫌がる人も少なくない。そこで小山辰己代表(53)は、利用者に迷惑が掛からない方法を考え、理美容車の製作を思い立った。
中古の2トントラックを購入。約10平方メートルの荷台をヘアサロンに改造し、6月に完成させた。費用を抑えるため、配電や排水の設備などほぼ全て会員自ら手掛けた。「店の客で、その道のプロから知恵を借りた。やっぱり客は宝」と小山代表。愛知県のキャンピングカー製造会社にも何度も相談に行っ た。
おかげで、外注すれば1,800万円という改造費は、車購入代を含め450万円に納まった。小山代表の活動に共感した大手自動車部品メーカー、デン ソーの大安製作所(同県いなべ市)は、従業員有志の募金による「はあとふる基金」で200万円を助成。桑名信用金庫(本店・桑名市)も福祉基金から20万 円を支援した。小山代表は「支援と知恵の結集だ」と喜んでいる。