「シャンプーを補助業務に」上西小百合議員(日本維新の会)が提案
理容師美容師の業務であるシャンプーについて、雇用拡大・後継者育成の観点から無資格者でも施術できる補助業務扱いにしたらどうか、と衆議院の消費者問題特別委員会で議員から提案され、厚生労働省では関係者らに調査、検討することにした。
理容師法、美容師の法の成立から、その後の経過などを語り、同法の存在意義を評価した上で、施行当時から時代が経過し、法規と現実とのギャップを指摘。施行当時は理容は男性、美容は女性といった暗黙の了解があったが、いまや時代はジェンダレスになっているなどとし、現行法はアップツーデートが必要だ、などと指摘した。
さらに、平成7年の法改正(平成10年施行)で、インターン制度が廃止され、一連の業務が有資格者でないとできなくなった改正法を説明。一方、理美容師を目指す人には苦学生が少なくない業界の歴史を語り、無資格者でもできる補助業務にシャンプーを加えることによって、アルバイトの給与も上がり、より就業しやすくなるとし、所管官庁の見解を求めた。
これに対し、矢島鉄也厚生労働省健康局長は、シャンプーを補助業務とすることによって、逆に理容師、美容師の雇用が脅かされる恐れがあるなどと答弁。
上西小百合議員は、理美容師に聾唖者などの就労が多いことなどから、理美容師の雇用を守ることに理解しつつも、施行当時には零細業者ばかりだった業界も今、大規模なサロン企業もあり、シャンプーを補助業務とすることは業界が抱えている後継者問題の解決の面からも有用だと語った。
また、シャンプー施術は瞬間湯沸し器が普及した1970年代以降、急速に定着したが、それ以前は希であったことなどを指摘し、再度の見解を求めた。
矢島鉄也厚生労働省健康局長は、理容師法美容師法第6条の規定をあげ、シャンプー剤の選定からマッサージ施術は、他の施術をスムーズに行うための重要な業務であるとし、また安心、安全、さらに良質なサービスの提供という面でも有資格者の業務であると答弁した。 併せて、理美容学校に通う学生が実習でシャンプー業務を行っていることなども紹介した。
これに対し、上西小百合議員はヘアカラーやパーマネントウエーブの施術については、用剤に劇薬が含まれているだけに有資格者による施術になるが、シャンプーはそのような恐れはないとし、再度の見解を求めた。
矢島鉄也厚生労働省健康局長は、慎重な判断が必要だとし、関係する業者、理美容学校の関係者らに調査することを約束した。
【理容・美容業界の法律・制度の年譜】
西暦 | 元号 | 内 容 |
1901 | 明治34年 | 理髪営業取締規則(東京都)。所轄は警察。道府県によって同様の規則を制定。※理髪は剪髪(理容)と結髪(美容)の総称。 |
1947 | 昭和22年 |
理容師法公布。昭和23年1月1日より施行。厚生省が理容、美容を併せて所管。 |
1951 | 昭和26年 | 理容師美容師法に名称を変更。 |
1954 | 昭和29年 | 通信制度の導入。 |
1955 | 昭和30年 | 店舗開設、届出制から、検査確認に。 |
1957 | 昭和32年 | 美容師法施行。理容師法と分離。 |
1957 | 昭和32年 | 生活衛生営業の適正化及び振興に関する法律施行。 |
1968 | 昭和43年 | 管理理美容師制度の導入。昭和44年施行。 |
1978 | 昭和53年 | 理容美容間による業権の問題(パーマ問題)が和解。 |
1983 | 昭和58年 | 健康診断の義務の廃止。 |
1984 | 昭和59年 | 理容業美容業の標準営業約款が厚生大臣より認可。 |
1985 | 昭和60年 | 資格試験の実施機関、都道府県から公益法人に移管。 |
1995 | 平成7年 | 養成施設入学者の高卒化、同昼間課程の2年制、実地習練制度の廃止、免許業務を都道府県から厚生大臣(指定試験機関が代行)へ。平成10年施行。 |
1996 | 平成8年 | 事業所の相続・合併に際しての届出制へ(検査の不要) |
2001 | 平成13年 | 障害者の欠格条項の見直し、障害者も従業可能に。 |
2001 | 平成13年 | 管理理美容師講習の見直し(講習時間の短縮) |
2008 | 平成20年 | 理容・美容振興指針の見直し。 |
2010 | 平成22年 | 理美容併設校での同時授業の実施。 |